【発達障害】発達障害は才能の源泉ではない
「必ず伸びます」は発達障害児の親を追い詰める言葉になる “何もしない”選択もアリ
医師の松永正訓(ただし)さんによるルポルタージュ「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社)。同書に登場する、知的障害のある自閉症児は筆者の息子です。息子が幼かった頃、健常児と比べ「あれもできない、これもできない」と眉間にしわを寄せていると、療育施設のスタッフやママ友から、「才能を見つけてあげて」「必ず伸びます」と励まされました。
その言葉について、しばらく考えて気づきました。「必ず伸びます」には「でも、今は伸びていない」、「きっと秘めた才能があるから」には「今は才能が見つかっていない」という意味も含まれるのだと。これらの励ましの言葉は、つらい子育ての活力や希望になることもありますが、一方で、“子どもの今”を否定し、親を追い詰める危険な言葉になることもあります。中には、子どもの今を受け入れられず“才能探し”に必死になってしまう親御さんもいると思います。
「発達障害=特殊な才能がある」というメディアの報道の仕方や取り上げ方には前々から疑問を持っていました。
実際、ほとんどの発達障害の人は才能が発掘されないまま、ただひたすら障害に苦しむわけですし、「発達障害なのだから何か才能がある」と思い込むのは本人にとっても周囲にとってもプレッシャーになるだけだと思います。
「発達障害は個性の一つ」というのもあまりどうかなーという言い方で、障害は障害としてはっきりと位置付けて、本人も周囲もケアに勤めるというのが大事なんだと思います。
どうも最近の「発達障害」を過度に美化する傾向は、当事者を追い詰めるだけのようなきがしてなりません。
「ただの発達障害」をありのままに見つめ、ありのままにつきあっていける社会をつくるのが大事なんだと思います。