【エナベルの本棚】『ドリフターズ』平野耕太

積み重なる思考と意思の贅沢な体験! 『ドリフターズ』平野耕太

こんにちは、エナベルで就労支援を受けているОです。

一度部屋どころか家まで崩壊するレベルに本をため込んでしまった経験があるので、あまり紙の本は買わないようにしている私ですが、発売情報が流れたらすぐに紙で予約する数少ないシリーズがこの『ドリフターズ』です。

ストーリーは、関ケ原の戦いで凄絶な撤退戦を繰り広げた島津豊久が死の直前に、異世界に転送され、そこで同じように地球からせ転送されてきた、織田信長や那須与一、ハンニバル・バルカ、などの歴史人物とともに、無念を抱えながら怨念の塊となってその世界わ滅ぼそうと転送されてきた黒王、ジャンヌ・ダルク、土方歳三、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ、ラスプーチンなどと死闘を繰り広げる物語です。

よく言われることですが、「平野節」などと呼ばれる独特のセリフ回しやベタを多用した迫力かる画面などで、大変勢いよく一気に読める痛快な作品ですが、私はこの作品や平野耕太という漫画家の作家性はそこにはないと思っています。

この人の前作である『ヘルシング』から通じて感じるのですが、とにかくこの人の作るキャラクターは、意思と思考の積み重ねが強烈なのです。

全ての行動やセリフが、いちいち作者の中で何度も何度も思考実験とそれに対するツッコミを重ねて、熟成に熟成を重ねて吐き出されるセリフや場面、そして、それに対抗するために別のキャラクターがやはり思考と意思を積み重ねて、それに対抗するという、画面の勢いとは相反して、恐ろしいまでに思考の積み重ねを経たやりとりがなされているのが平野耕太という作家の一番の作家性ではないか? と私は思っています。

とにかく、セリフ一つ一つ、公道一つ一つが、何度も何度も思考実験と、自分の中でのツッコミを繰り返して、それに熟成を重ねた上に、吐き出される、そしてそれが一瞬のうちにコマの進行の中で噴出していく豪華さ。

重ねつくした思考を、贅沢ともいえる物量で展開される、まさにソ連の縦深攻撃のような容赦なさで読者に叩きつけられる豪奢な体験。

それが平野耕太という作家の作品を読む醍醐味なのではないでしょうか?

この作品でも、とにかく敵側である黒王たちが容赦なく、隙もなく凄まじい積み重ねと丹念な容赦なさで人類を追い詰めていきます、それに対抗する事を考えさせないかのように容赦がないです。そして、それに対抗するために島津豊久や織田信長たちがどう危機を脱出するのか? でもさらなる思考が積み重ねられています。

こうした、両者の思考と意思の積み重ねが、マンガの中ではほんの数コマ、数ページに凝縮されて展開されるのですからたまりません。まだ6巻しか出ていませんが、読んでいる人の頭脳はそのスピード感ある思考に脳内を蹂躙されていく快感に浸れることでしょう。

とても勢いとスピード感のあるコマの中に込められた思考と意思を凝縮した弾丸は、何連発も脳髄に叩きつけられる快感。

私はそれを味わうために、発売と即買いを繰り返しているといっても過言ではありません。

とにかく、数百円の単行本ですが、それに込められた思考と意思の積み重ねは大作映画にも負けないブレーンストーミングが作者の中で繰り返されているのを感じられるという、とても贅沢な体験をあなたに与えてくれるでしょう。

今『ドリフターズ』は終劇に向けて最高潮に盛り上がっている所です。この贅沢な体験をリアルタイムで感じられる貴重な時間に乗り遅れてはいけません。そして次回の展開を待ち望んでは待たされる快感を今から味わいましょう。

凝縮された思考の贅沢な体験を今からでも遅くはありません、手に取ってみてください!

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