【引きこもり】テレビの「差別的引きこもり報道」に今こそNO!大阪なおみ選手に続け
大坂なおみ選手のボイコットを見て引きこもりに対する差別を思う
米国で黒人男性が警察官に背後から撃たれたことに抗議し、プロテニス選手の大坂なおみさんがツアー大会をボイコットすると発表したニュースを見ていて思ったことがある。
大坂さんは、自身のツイッターで「私はアスリートである前に、1人の黒人女性です。何度も何度も同じ話題を扱うことに疲れ切っています。いつになったら終わるのでしょう」とつぶやいていた。
これは、他のスポーツ競技で試合を延期するなど黒人男性を悼む動きがある中で、テニスは何事もなかったかのようにトーナメントを進めていいのか?という彼女なりの問題提起だ。
ところが、日本では「スポーツ選手が政治的発言をするべきではない」「あなたはもう日本人ではない」などといった批判があふれた。
自身も当事者である大坂さんがどんなに訴えたかったかが分かる出来事のはずなのに、多様性を持つ彼女のような思考に見て見ぬふりをして、言葉を封じ込める人たちがたくさんいる現実に驚かされる。
それでも大坂さんのようにいわば「勝ち組」の状態にある人であっても、あえてリスクをとって意見を表明することの重要性を感じた。
(中略)
「引きこもり」についても長年、構造的に差別目線で見ることを許してきた社会がある。
8月25日に出演したTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」(特集「暴力的『引きこもり支援』施設問題~引きこもり報道ガイドラインはどうなっているのか?」)の番組内でも、「メディアが引きこもり本人を素材として扱う問題」が話題になった。
特にテレビ番組から取材依頼があると、「引きこもりの人の部屋を撮りたい」とお願いされることが多い。
こうした場合、これまでの経験から取材者には、「引きこもっている当事者との関係性はそれぞれが丁寧に確認しながら築いていかないと、取材や撮影を断れなくて彼らを傷つけることがあるから」と説明し、「部屋を撮ることが目的で紹介することはできない」とお断りするようにしている。
すると、「先方の連絡先だけでも教えてくれませんか?こちらで(部屋の撮影を)交渉しますから」と食い下がってくる。
(中略)
そうした番組側の協力要請を断ると、筆者へのインタビューの話自体が立ち消えになることもある。
番組でそんな趣旨の話をしたら、ラジオ番組のパーソナリティーを務める荻上さん自身も同様の経験を披露してくれた。
テレビ局から、「いじめが増えているので、うつになって休職した学校の先生を紹介してくれませんか?」と言われ、「うつの人の紹介なんてできないし、取り上げて何をしたいのか?」と問い合わせたら、別の人のところに行ったという。そして、メディアの「決め打ち報道」の問題を指摘した。
「テレビって、絵がないと始まらないんですよね」
あるテレビ業界の関係者は、そう明かす。
「扉の向こうの引きこもってる像を何が何でも撮ってくることが、勲章になるんです」
リモート出演していた精神科医の斎藤環さんは、「自立支援ビジネスの業者は、ドアを蹴破って部屋に入るシーンを華々しく撮らせてくれる。そして、その映像が放送されると、業者にとっては宣伝になる」と指摘。メディアと業者の相互依存の関係があったと話す。
引きこもっている人の「自立支援」をうたうある業者の施設に入居させられていた当事者は、親の依頼を受けた業者がいきなり部屋に入ってきたとき、すでにカメラクルーが一緒にくっついて来ていて、了承もなくカメラを回していたと証言する。
部屋で業者から説得を受けている間もカメラはずっと回り続け、車で施設に連れていかれるまで撮られ続けたという。
「引きこもり」は社会を困らせる「悪」の象徴で、苦しめられている親は「善」。そんな親の依頼を受けて、当事者を家から外に連れ出す行為が「正義」であるかのように描かれる。まさに、メディアが求める勧善懲悪のストーリーであり、視聴率も跳ね上がる。
しかし、そこに引きこもっている本人の意思や権利はない。その扱いはもはや「人」ではなく、レッテルを貼られた「素材」なのだ。
前述のラジオ番組に出演した「暴力的『ひきこもり支援』施設問題を考える会」の木村ナオヒロさんは、「突然支援者が訪問してくるのは、かなり苦痛。それが“いい支援”だとテレビが宣伝するのは一番の問題だと思う。また、その映像がユーチューブなどに残っていることで、引きこもりの当事者から苦痛を感じているという連絡をもらったこともある。終わりのない苦しみを受けている人たちがいるので、テレビが積極的に動画サイトから削除してほしい」と話す。
ちなみに、昨年自分が出演を断った生番組に誰が出演しているのかを見てみたら、いわゆる「引き出し屋」と指摘されている業者が、まるで「引きこもり」の評論家のように事件について語っているのを見て驚いた。番組では、モザイクはかかっていたものの、引きこもりだったという人が業者の下で生活している姿がずっと映し出されていた。
こうした状況が続いている今、「引きこもり」に関しても、差別に対して反対であるという意見表明が求められている。
「引きこもり」状態が長年続くのは、本人の問題ではない。きっかけは、いろいろある。安心できない家族環境、学校や職場などの社会、人権よりも優先される組織の問題などの環境的要因が大きい。
しかし、これまでのような引きこもりの当事者を“下”に見る間違った上下関係ではなく、フラットな対話の場をつくって、「あなたを差別していません」というメッセージが伝われば、彼らがたくさん出てくることは明らかだ。
引きこもりの当事者たちが主催する「ひきこもり」や「女子会」をテーマにした居場所や、筆者が仲間とともにつくった「ひきこもりフューチャーセッション『庵 -IORI-』」などの実例がいくつもある。
2019年に起きた農林水産省の元事務次官による刺殺事件や川崎市の通り魔事件など、引きこもり当事者が関連した一連の事件以降、「引きこもりは犯罪者予備軍ではない」「当事者を偏見の目で見るのはやめましょう」などと、いろいろな人たちが主張し始めた。
しかし、メディアも支援者も家族も、そこからもう一歩踏み出さなくてはいけない。
当事者を偏見的に扱う烙印や発信、宣伝の素材として使われることに対し、NO!と言おう。
「引きこもりの当事者を家から引き出さなければいけない“自立”の対象とみなす考え方には賛同しません」というアクションを起こす時が来ている。
最近、地方の引きこもり当事者たちの間から、報道ガイドラインをつくりたいという声が挙がった。
何か事件が起こるたびに、メディアの記者から「ひきこもりの人は犯罪を起こすのか?」と質問されることが繰り返され、風評に脅えてきたことがそのムーブメントにつながった。
現在、引きこもり当事者たちの間で「ひきこもり権利宣言」を作成中で、年内に完成する見通しだ。それが公表され次第、当事者だけでなく有識者やメディアの人たちの視点も交えた場で「ひきこもり報道ガイドライン」の作成に着手する予定だ。
https://diamond.jp/articles/-/247577 DIAMOND onlineより引用
エナベルで就労移行支援を受けています、ウサギのTです。
メディアと引きこもり…。どうしても引きこもりの絵をとりたいというメディアのわがまま。
差別を助長するようなステレオタイプな絵が求められるなら、これはいただけない話です。
引きこもりの人たちは人であって、「素材」ではないと。
2019年に起きた農林水産省の元事務次官による刺殺事件や川崎市の通り魔事件など、引きこもり当事者が関連した一連の事件以降、「引きこもりは犯罪者予備軍ではない」「当事者を偏見の目で見るのはやめましょう」などと、いろいろな人たちが主張し始めてる今、メディアも変わって欲しいです。
報道ガイドラインをつくろうという地方の当事者の間から意見が上がってきているなら、是非作って欲しいです。
引きこもりの人は好きで引きこもっているわけではないと。ましてや引きこもりは犯罪予備軍ではないと。
引きこもりへの差別につながる報道体制をどうにか変えるために。