【引きこもり】NHK「こもりびと」誕生秘話、発案者が語る今ひきこもりを取り上げる理由

11月末から12月前半にかけ、NHKがひきこもり関係の番組13本を一挙放送した「#こもりびと」プロジェクトが大きな反響を呼んでいる。
このプロジェクトでは、筆者も番組づくりの一端を担わせていただいた。
そこで、まだ余韻の冷めやらぬ「#こもりびと」のプロジェクト発案者である、NHK報道局の松本卓臣チーフ・プロデューサーに、プロジェクトが生まれたいきさつなどの話を聞いた。

 

引きこもる息子役の松山ケンイチさんが父親役の武田鉄矢さんに訴えた言葉

「これまでだって、十分頑張ってきたんだよ。これ以上、何を頑張れって言うのよ」

引きこもる息子の役を務めた松山ケンイチさんが、父親役の武田鉄矢さんに訴えるシーンが印象的だった、ドラマ「こもりびと」のワンシーン。
11月末から12月前半にかけ、NHKがひきこもり関係の番組13本を一挙放送した「#こもりびと」プロジェクトが、大きな反響を呼んでいる。

中でも、NHKスペシャルドラマ「こもりびと」(11月23日放送)とNHKスペシャル「ある、ひきこもり死 扉の向こうの家族」(11月29日放送)は異例の高視聴率をマーク。ビデオリサーチの調べによると、関東地区の総合視聴率はそれぞれ、「こもりびと」が11.0%、「ある、ひきこもり死」が10.3%に上ったという。
局には「他人事とは思えない」という声が数多く寄せられ、引きこもる本人やその家族の間で「こもりびとロス」なる言葉も生んだ。

また、今回のNHKスペシャルを見た自民党の下村博文政調会長が党内に「対策プロジェクトチーム」を立ち上げるなど、支援施策に当事者の声を反映させる流れも加速しそうだ。

このドラマのタイトルにも使われた「こもりびと」プロジェクトが始まって以来、筆者は全国のひきこもり家族会などの現場で「なぜいま、NHKがキャンペーンやっているのですか?」とよく尋ねられた。

プロジェクトを統括する松本氏によると、きっかけは2019年3月、内閣府の実態調査でひきこもり状態にある人が100万人に上ると推計されたことだったと振り返る。

「NHK局内でもきちんと伝えていかないといけないと思わせる、インパクトのある数字でした。
その後、川崎市の通り魔殺傷事件や元農林水産事務次官の長男殺害事件などが『ひきこもり』と結び付けられ、本人や家族が困惑し、動揺していました」

現場のディレクターたちからは、「ひきこもり状態に置かれている人の実像を正確に伝えなければいけないのではないか」という意見が上がってきた。

同年8月には、筆者も出演した「クローズアップ現代+」で「中高年ひきこもり」をテーマに、死に至る人もいる現実を放送。
やはり大きな反響が寄せられた。その後も、「ひきこもり」をテーマにした「クローズアップ現代+」が2本続けて放送されている。

声を上げられずに長い歳月を過ごした「中高年ひきこもり」の人たちが、親世代が亡くなることによって自身も亡くなってしまう厳しい現実の端緒が表れ始めている。報道番組だけでなく、NHKの他の情報番組もそれぞれの視点で「ひきこもり」について別々に伝え始めていた。

 

「ひきこもり」というテーマはNHKが総力を挙げて発信すべき

そんな中、現場のディレクターたちの間からこんな声が挙がってきたという。

「裾野の広いテーマなので、各セクションが意見交換もしないでバラバラに伝えるより、NHKが一枚岩になって、課題や知見を集約しながら全体像を正確に発信していかないといけないのではないか」

「こもりびと」プロジェクトは、そんなボトムアップのプロジェクトだった。

「番組の放送を重ねる中で、『ひきこもり』の広がりは時代の変化と関係があるのではないかという感覚がありました。
また、(ひきこもり状態にある人が関係する)事件が起きると、当事者に対する『怠けだ』『自己責任だろう』という意見も相変わらず聞こえてくる中で、『ひきこもり』という言葉の持つネガティブなニュアンスを変えられないかという声が幾つかあったのです」

そのときすでにNHKには「ひきこもり」に関する情報発信に取り組んでいる番組があった。
情報番組「あさイチ」は女性の視点から取り上げ、「プロフェッショナル 仕事の流儀」はひきこもり支援者の石川清さんを取材していた。
また、さまざまな福祉情報を展開している「ハートネットTV」もあった。

松本氏が「一緒にやりませんか?」と各番組のプロデューサーやディレクターの元を訪ね歩いたら、「ぜひやりたい」ということになり、スムーズに進んだという。

「誤解を理解に変えていきたい」という思いから、同プロジェクトは元農水次官による刺殺事件から1年後となる、20年5月末の放送を目指した。
松本氏は、局内を横断する形の大規模なプロジェクトの提案書を書いて各番組と連携し、企画が実現に向けて動き出した。

 

コロナ禍で日本中が「総ひきこもり化」プロジェクトは一時休止

ところが、その矢先にコロナ禍に見舞われた。

3月末ごろには、ドキュメンタリ―の取材がままならなくなった。
政府から緊急事態宣言も出され、ドラマ「こもりびと」の撮影も中断した。

まさに、日本中の人たちが総ひきこもり化した。
こういう状況の中で、引きこもって苦しんでいる人をテーマにすること自体、やりにくいという空気も生まれた。

ただ、夏頃になると、「これから先、経済は厳しくなっていくだろう」「人との関係が断たれてしまう人が増えていく」という懸念も広がっていた。
実際、仕事を失う人が目に見える形で増えていた。

「今であれば番組を受け止める側も、人とのつながりが断たれてしまう苦しさや孤立せざるを得ない状況に思いをはせてくれる人が多いのではないか。
それに、新たなひきこもり層の形成につながるような事態も起きていた。むしろ今こそ、『ひきこもり』について、伝えることが大事なのではないか」

松本氏が感じていた問題意識と同じような思いを他のディレクターたちも共有していた。

また7月には、引きこもっている人を無理やり部屋や自宅から連れ出す「問題」を取り上げた『クローズアップ現代+』(筆者も出演)を放送。
その番組の取材を通して、「親御さんたちがコロナ禍によって支援先とつながれなくなって苦しんでいる話を伺えたのも参考になりました」と松本氏は語る。

「ひきこもりは、時代の揺らぎや経済の打撃とも無関係ではない。
その意味を他の番組の関係者とも共有できて、11月に『ひきこもりプロジェクト』の実現を目指すことになったんです」

 

「ステイホーム」で家族全員が逃げ場を失うケースも

世の中全体が「ステイホーム」の状況になり、引きこもっていた本人にとってはやましさから解放され、気持ちが楽になったという声がある。
その一方で、家族全員が家の中にいて逃げ場がなく、お互いのストレスがたまり、緊張関係が高まった――。
そうした話が、筆者が関わっている家族会でも相次いで報告された。

雇用についても、コロナ禍の影響で解雇や雇い止めに遭ったという相談が夏頃から届き始めていた。
リーマンショックのときも少し時間が経ってから、以前の状況に戻れない新たなひきこもり層が増加したことを考えると、これから一気に問題が顕在化していく予感があった。

松本氏らは、考えを切り換えるようになった夏頃からドラマの撮影も再開。NHKスペシャルにはコロナ禍の要素も取り込んだ。

「局内も、このプロジェクトを行うことは大事なのではないかという空気に自然となっていったんです」

 

他人事とは思えない」「明日はわが身」視聴者から最も多かった反響の声

プロジェクトのドラマやドキュメンタリーなどの放送後に最も多かった声は、「他人事とは思えない」「明日はわが身」などだ。
厳しい状況の人たちを取材しているにもかかわらず、「特殊な世界の人」といった反応はほとんどなかったという。

「皆、多かれ少なかれ、社会や家庭内での生きづらさ、業績や効率を求められる組織の中での疎外感、将来どうなるか分からない不安を抱えている。とても多くの人が、ひきこもり当事者の方が語る言葉や、松山ケンイチさんのセリフを自分に重ねて見てくれたし、今という時代に響くテーマだったんだなと改めて感じました」

ところで、なぜプロジェクト名が、元々の「ひきこもり」ではなく「こもりびと」のネーミングになったのか。

「放送するたびに、『ひきこもりという言葉が悪い状態を指しているようでしんどくなります』といった声を耳にする機会が増え、伝え方について考えるようになりました。例えばハートネットTVでは『ひきこもり文学』に出てくるご本人たちが、深い言葉を持っている。
こうして魅力的に伝える視点もあるのかと思いました。
ひきこもりという言葉が、悪いことのようなレッテルになっていないかについても、プロジェクトの中で議論になったんです」

NHKでは元々「ひきこもりクライシス」というサイトで、当事者の声を紹介したり取材の情報を伝えたりしていた。
一方で、「ひきこもり」が危機であるかのように受け取られかねないのではないかという議論もあったという。

 

「ひきこもり」から「こもりびと」へプロジェクト名が決まった経緯

「ドラマの制作中に神奈川県大和市で(19年10月から)『こもりびと』という呼び方をしていることも聞きました。
呼称の響きが優しいことも参考になり、先にドラマのタイトルが決まったんです。
今までのような伝え方のままでいいのかと自問自答しながら、ひきこもりという目線そのものも考えながら向き合っていけないかという思いで、『#こもりびとプロジェクト』に決まったんです」

中には「ひきこもりは問題なんだから、柔らかい名前でくるむな」といった視聴者の声もあり、そうした指摘も受け止めているという。
ただ、大半は「温かみがある言葉」「こもりびとって、いいよね」といった反応だったそうで、特にドラマ「こもりびと」の続編を希望する声は、筆者も家族会などで数多く聞いた。

「苦しみを抱えて逃れたい人たちもいて、いろんな形で手を差し伸べなければいけない。
まずは、自分たちが持っていた固定観念、目線を変えていくことも大事なのかなと思います。
自分自信も番組に深く関わる以前は、ひきこもり当事者に対して『自業自得の面もあるのではないか』という思いが、心のどこかにあった。
取材を通して知れば知るほど、そうではないことが分かってきたし、『ひきこもり』という言葉に違和感を覚えるという声も理解できるようになった。
そうしたことも、僕らはきちんと伝えていく責任があると思いました」

従来の「ひきこもり」という言葉が持つ、外から問題視しているかのようなニュアンスを変えていきたい――。
「こもりびと」というネーミングには、そんなメディアとしての思いも込められているようだ。

https://diamond.jp/articles/-/258091 DIAMOND onlineからの引用

 

エナベルで就労移行支援を受けています、ウサギのTです。

こもりびとプロジェクトについてはこのブログでも何回か書いていますが、

何故今、NHKがこの特集をするのか、なぜやることになったのか気になったので、その辺をまとめています。

NHKの「裾野の広いテーマなので、各セクションが意見交換もしないでバラバラに伝えるより、NHKが一枚岩になって、課題や知見を集約しながら全体像を正確に発信していかないといけないのではないか」
「こもりびと」プロジェクトは、そんなボトムアップのプロジェクトということだったようですね。

コロナ禍で一時中断するものの、コロナ禍の「ステイホーム」で、改めてNHKスペシャルにはコロナ禍の要素も取り込んで再開。

プロジェクトのドラマやドキュメンタリーなどの放送後に最も多かった声は、「他人事とは思えない」「明日はわが身」など。

今まで特殊だと思われてた「引きこもり」が自分にも起こりうるかもしれない…という意見。

NHKでは元々「ひきこもりクライシス」というサイトで、当事者の声を紹介したり取材の情報を伝えたりしていました。

それをまとめて名称も変えてスタートしたわけです。

反響も上々で、NHK側としては報道機関としてしっかりと伝えたわけですね。

これで「引きこもり」の人々への見方が変わり、支援も増えていけばいいと思います。

全国放送で流したわけですから、その影響は大きいとおも凄いですからね。

 

 

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