【障害者雇用】「障害者の在宅勤務」あまりにもシビアな実態

新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの企業が在宅勤務を本格的にスタートさせた。
緊急事態宣言が発出されてから半年が経った今、一部の企業で浸透しつつある。それを肯定的に捉えるマスメディアや識者は多い。

「通勤時間が削減できて、働きやすくなる」「家事をしながら働くことができる」などがその理由の一例だ。
いずれも、今後は労働のあり方が働き手にとって緩やかになると捉えているようだ。

一方でそれとは正反対のシビアな環境で必死に働く人たちがいる。障害者の人々だ。
実際、彼らの中では前々から在宅勤務に取り組む者が少なくない。
その多くは重度の身体障害者であるために、ほかに働く場をなかなか見つけることができない。
ようやくつかんだ現在の就労スタイルを続けたいという思いから、真剣に仕事に取り組む。

今回、取材した会社2社の社長たちは自社で働く在宅勤務の障害者の社員をこう称える。
「自分たちには在宅勤務しか、働く場がない。ここでうまくいかないと生きていけなくなると思い、働いているようだ。その姿勢には心を打たれる」。

 

全社員の65%が在宅勤務
人材サービス業のマンパワーグループの特例子会社ジョブサポートパワー(東京都立川市)は、2004年から在宅勤務制度を導入した。
当初は7人でスタートし、その後、状況に応じて増やしてきた。

主な業務は、グループ会社が新たに商取引をする際の与信判定業務や契約書のファイリング、発送、顧客リストの作成など。
全社員160人のうち、マンパワーグループからの出向者が16人、プロパー社員は144人。
うち障害者は138人。内訳は約9割が身体、約1割が精神、知的で、半数以上が重度だ。

在宅勤務の対象となるのは、働く意思がありながらも通勤が困難な重度障害者。
対象の社員は、2013年に全社員の半数を超えた。2020年10月1日時点では、全社員の約65%の95人。今後は、90%を目指す。
各自の自宅は全国各地にあるが、首都圏や関西圏が多い。業務の報告や連絡、相談は主に電話やメール、マイクロソフトの「Teams」を使う。
就労は通常週5日、1日6時間とする。残業はない。

在宅勤務者のみで構成されるグループは7。1グループのメンバーの人数は8~12人。
グループには、管理職であるセンター長もしくはリーダーの下にサブリーダーが通常1人。その下に社員がいる。

(中略)

健康状態に急変があった場合、社員間で担当業務を変えて、フォローするためだ。
小川慶幸社長によると、現在まで大きなトラブルや混乱はないという。

同社の取り組みにおいて注目すべきは、「入社3カ月間の研修とその後のフォロー」「配属会議とチーム編成方針」だ。

「入社3カ月間の研修とその後のフォロー」はまず、入社時に性格や協調性、技能、障害の程度、特性、仕事をする際の課題、本人の考え、希望を丁寧に観察・聞き取りをする。特に協調性の有無を重視している。次にグループに配属後、人間関係でトラブルが生じる可能性がある場合、本人にその旨を伝え、言動を改善してもらう。

改善の余地がないときは3カ月終了後、研修を延長するケースもあるという。
小川社長は「研修をルーチンワークにして、終了後にそのまま機械的にグループに配属しないことを大切にしている」と話す。

(中略)

 

メンバー構成で重視する技能
「配属会議とチーム編成方針」の会議はまず、研修を終えた新入社員を自らのグループに受け入れたいと希望するリーダーが集い、センター長を交え、話し合う。

具体的には新入社員の障害の程度や特性、性格、技能を共有する。
そのうえで、正式に受け入れたいリーダーは申し出る。複数の場合、調整し、いずれかのグループに配属する。
受け入れを願うリーダーが1人もいない場合、研修を延長している。受け入れるリーダーが現れるまで続けるが、通常その期間は短い。

グループメンバー編成の際に重視するのが、技能だ。
リーダーは本人がどのような仕事をどのレベルでできるのかを丁寧に確認する。年齢、性別は、参考程度。
「技能をもとに編成をしないと、後々、トラブルになる。
優れた技能を見いだし、伸ばしていくことが、障害者雇用を安定化させるために重要だ」(小川社長)。

調剤薬局大手クオールホールディングスの特例子会社クオールアシスト(東京都中央区)は、2009年に設立された。
当初から、重度の障害者を中心に障害者雇用を積極的に進めてきた。

特に物理的に移動が困難な障害者の在宅雇用に力を入れる。
現在、車いすを使用する社員が8割を超える。頸髄損傷のために90度の座位が難しい社員もいる。
交通事故やスポーツ中の事故などで、体が不自由になったケースが多い。

業務の中心は、グループ社から請け負う「データ入力」「イラストデザイン」「Web制作」など。
社員56人のうち、在宅勤務は50人で、その内訳は重度身体が48人、軽度身体が2人。本社勤務は6人で、1人が軽度身体。
在宅勤務の社員は全国各地に住み、全員が1年ごとの契約となっている。

 

在宅勤務に欠けている視点が見えてくる
在宅勤務をスムーズに進めるうえで力を注ぐのが、社内外や社員間の情報共有体制の構築、整備だ。

ここからの流れが興味深い。まず、採用試験の後、内定を出す前に青木英社長をはじめ、在宅事業部の社員がエントリー者の自宅を訪問する。
家族関係や支援の体制、仕事部屋の間取りや室内の様子、トイレや入浴の状況を確認し、大きな問題がないと判断した場合、内定とする。
家庭訪問の結果、不採用としたケースもある。
さらに社長や在宅事業部の社員は、地域の支援団体「障害者就業・生活支援センター」や地元の自治体へ出向き、協力体制をつくる。

内定後のパソコン設置時には、在宅事業部の社員が自宅まで出向き、セッティングをする。
車いす使用時の机の高さや作業時の姿勢を考慮し、作業療法の視点も取り入れて対応する。
遠隔地に住む場合も、現地の業者に依頼はしない。
青木社長は「外部の人を自宅に入れることは、情報漏洩につながりかねない。
障害を抱えた本人や家族にとっても、精神的な負担になりうる」と話す。

Web会議システムを使うミーティングは、パソコンの画面に画像を映さず、声のやりとりだけにする。
画像を映すと室内の様子が映り、プライバシーを保護することができないためだ。
「画面に出ると、ほかの社員に気を使いすぎる社員がいる。精神的な負担を避ける配慮をできるだけ施したい。
一方で顔が見えないために互いに深読みをする場合がある。
そこまでしなくともいいところまで対処するときもあり、それが業務負荷になりかねない」(青木社長)。

同社では働き手本人や家族の同意のうえ、家庭生活にまで入り、心身の健康や就労のスタイルに配慮している。
本来、障害の有無にかかわらず、企業には社員の労働安全に配慮する責任がつきまとう。
「労働時間や働く場所は個々の社員が判断する。それぞれの自己責任」といった捉え方にも一定の限界があるだろう。

障害者の在宅勤務の実態を見ていくと、私たちが考えるべき経験や事例が数多く凝縮されている。
こうした部分によりフォーカスすることで、浸透しつつある在宅勤務に欠けている視点がみえてくるのではないだろうか。

https://toyokeizai.net/articles/-/391818 東洋経済オンラインより引用

 

エナベルで就労移行支援を受けています、ウサギのTです。

新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの企業が在宅勤務にシフトしています。

でも、前々から在宅勤務で働いていた重度障害者の人は、ほかに働く場をなかなか見つけることができず、

ようやくつかんだ現在の就労スタイルを続けたいという思いから、真剣に仕事に取り組むようですね。

引用先にあるように。

引用先にある二つの企業は、そのことを充分理解して、在宅勤務でしか働けない障害者をフォローしながら、考慮しながら雇用されていますね。

こういう取り計らいがあるからこそ、在宅勤務でしっかりと働けるわけで。

コロナ禍で、健常者でさえ在宅勤務が多くなる中、在宅勤務しかないシビアな障害者は必死で働くしかないと。

でも会社側がここまでやってくれているので、やりやすいと思います。

障害者に理解がないとやはり働いていけませんからね。でも、コロナ禍で憂き目に遭ってる障害者は多いことも事実です。

だからこそ必死に働くのでしょうね。在宅勤務というフィールドでしか働けない重度障害者の方々は。

そこに健常者が入ってきたらと思うと…シビアですね…。

 

 

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