【引きこもり】不登校で引きこもりになる人が2割以下の背景

アキラ君(仮名)は現在22歳。小さい頃から人間関係が苦手で、友人があまりいないタイプでした。
大学に入って間もなく不登校になり、そのまま中退。
その後何もしないまま、約3年が過ぎています。両親は働いているので、日中は家で1人。
昼頃に起きて、家にあるものを食べながら、リビングでテレビなどを見ています。

両親が帰宅する夕方頃からは、自室でパソコンに向かい、ゲームをしたり動画を見たりして過ごします。
廊下で親と顔を合わせて話しかけられると、普通に返事もします。
家族が寝静まってから用意してある夕飯を食べて、そのまま夜中までパソコンです。

バイトしてみたらと親には言われるのですが、一度も働いた経験がなく、応募する勇気も出ません。
週に何度かは近所のコンビニに行き、もらっている小遣いでお菓子や飲み物を買います。
たまに電車に乗って、少し遠くまで服などを買いに行くこともあります。年に2、3回は、好きなアイドルのコンサートに出かけます。

 

家にずっといるわけではない
これは、よくいる引きこもりの生活です。
引きこもりと言うと、じっと家の中にいる、家から出ないというイメージではありませんか? 
内閣府が2016年に発表した15~39歳を対象とした引きこもり調査では、「趣味の用事のときだけ外出する」が67.3%、「近所のコンビニなどには出かける」が22.4%と、実はほとんどの人が外出はしているのです。それに対して、「自室からは出るが、家からは出ない」はたったの10.2%、「自室からほとんど出ない」はなんと0.0%でした。

同じく2019年に発表された40~64歳という高年齢引きこもりを対象とした調査では、年齢が上がった分、内容は深刻にはなりますが、それでも「趣味の用事のときだけ外出する」が40.4%、「近所のコンビニなどには出かける」が44.7%で、外出する人は8割を超えています。さらに「自室からは出るが、家からは出ない」は10.6%ですが、「自室からほとんど出ない」が4.3%と、重度の引きこもりはこの年齢の方が多いことがわかります。

これらの調査による推定引きこもり人数は、15~39歳が54.1万人、40~64歳が61.3万人で、合わせて115.4万人。
外出しない引きこもりの人数は15~39歳が54.1万人×10.2%=5.5万人、40~64歳が61.3万人×14.9%=9.1万人で、合わせて14.6万人となります。
全体で考えても、家から出ない引きこもりはおよそ12.7%に過ぎません。
統計上では、引きこもりと言われている人のうち、9割弱が近所のコンビニ程度の外出はできているのです。

私たちニュースタート事務局は、主に親御さんからの相談を受けていますが、実際の相談でも、コンビニ程度には行けるという人が大半です。
全く家から出ない人は、2~3割でしょうか。
親御さんが相談しようと思うだけあって深刻なケースが多いのか、内閣府の調査よりも少し多い感じですが、過半数にはほど遠いのが実態です。
これは、世間が持つ一般的な引きこもりのイメージとは、だいぶ違うのではないでしょうか。

内閣府では、学生でもなく仕事もしておらず、家族以外とあまり会話していない状況が半年続いている人を、「広義の引きこもり」と定義しています。
主婦や家事手伝い、原因が身体的な病気の人などは除きます。
省庁によって多少表現の仕方は違いますが、大枠は同じです。

ずっと自室で過ごし、親が部屋の前まで食事を運び、終わったら廊下に出してある食器を取りに行くだけで、親も何年も姿を見ていない人。
外出はできて、買い物の時は店員と必要最低限の話はして、近所の人と道端で会えばあいさつ程度はするが、親しく会う友人がいない人。
この両方とも、引きこもりと呼ばれる人たちなのです。そして、実際の引きこもりは、後者のタイプが大半を占めているのです。

 

不登校がきっかけは2割以下
カズヤ君(仮名)は現在、33歳です。専門学校を卒業して就職、実家を出て1人暮らしもしていました。
6年同じ会社で勤務を続けますが、だんだん人間関係で負担を感じるようになり、最後は仕事のミスを上司だけでなく後輩にも指摘され、会社に行けなくなりました。

親は息子を実家に戻し、しばらく様子を見ていました。
1年もすると、カズヤ君は契約社員として働き始めました。
親も一安心しましたが、半年後、彼は契約を更新しませんでした。
やはり仕事のミスを何度かして、続けるのがつらくなったようです。そこから5年間、何もしない状況が続いています。

普段はパソコンでゲームをして過ごしています。
昼夜逆転の生活ですが、タイミングが合えば、夕食は家族で取ります。
一応会話もあります。ゴミ捨てや風呂掃除などを母が頼むと、ちゃんとやってくれます。
自主的な外出はほとんどありませんが、親が外食に誘うと出てきます。
免許の更新は行ったようですが、就職活動をする様子はまったくありません。
友人など親以外の他者とのつながりも、今はまったくないようです。

引きこもりのきっかけは不登校。そんなイメージを持っている人もいることでしょう。
確かに一昔前は、そう思われていました。ですから引きこもりは若者の問題とされ、対策の対象年齢もそれに準じたものになっていました。

しかし、内閣府の15~39歳対象の調査では、引きこもりのきっかけが小中高の不登校という人は、18.4%に過ぎません。
アキラ君のように大学になじめなかったという人を合わせても、たったの22.4%なのです。
40~64歳対象の調査では、小中高の不登校がきっかけと回答した人は、わずか8.5%。複数回答可ですので、最大でもこの数字なのです。

両方を合わせると、不登校がきっかけで引きこもりになった人はおよそ15.0%しかいません。
むしろ、カズヤ君のように、一度は仕事についた後に引きこもりになった、というケースの方が主流なのです。

年齢から考察しても、数字は大きくは変わりません。
19歳以下で引きこもりが始まったという人は、15~39歳で42.8%。40~64歳ではわずか2.1%。
全年齢では、10代から引きこもっている人は、およそ21.2%になります。
不登校がきっかけだと思われる、実際に10代から引きこもっている人は、全体のたった2割程度なのです。

これは、私たちが現場で受けている相談での印象とも一致します。
統計を出したことはありませんが、不登校からそのまま引きこもったという人は、いるにはいますが、過半数にはほど遠い。

同時に、バイトであれ何であれ、働いたことが一度もないという人も、少数派です。
引きこもりの相談でいちばん多いのは、「学生時代は何とかやってこられた。就職やバイトの経験も少しはあるが、うまくいかずやめてしまい、結局引きこもった」という人たちなのです。

 

キーワードは「多様性」

9月に刊行した著書『コンビニは通える引きこもりたち』では、私が所属する引きこもり支援団体の25年以上の活動の蓄積と、年間約150組のご家族の対面相談を受けている私自身の経験に基づき、引きこもりとそれを取り巻く状況について説明しています。

全体を通じて、引きこもり自身が何をしたらいいかではなく、親も含め周囲が何をするべきかという視点で書きました。
周囲の状況が変われば、引きこもり本人にも何らかの変化が生じるので、まずは周囲が対応を変えるべきという思いからです。

キーワードは「多様性」です。
これは最近言われ始めている、引きこもりの方の多様性に留まりません。
引きこもりという問題に直面していると、紋切り型のイメージでは理解の覚束ないことが多く、必然的に多様性ということを考えざるを得なくなるのです。

https://toyokeizai.net/articles/-/378383 東洋経済ONLINEより引用

 

エナベルで就労移行支援を受けています、ウサギのTです。

私も誤解していました。引きこもりの人は外に出ず、ずっと家に籠っている人かと思っていました。

結構外出しているんですね。趣味の類の事なら何度も出掛けてしまうほどに。

だけど、バイトとか就職活動については全く動かないんですね。

過去に働いて嫌な経験をしてるから、それがトラウマになっているんでしょうかね。

外出はできて、買い物の時は店員と必要最低限の話はして、近所の人と道端で会えばあいさつ程度はするが、親しく会う友人がいない人…

これちょっと自分も当てはまりそう。会う人が忙しくてなかなか会えないんですけどね…。

エナベルに来る前は引きこもり生活でしたからね…。親の介護をしながら、ケアマネさんや親のかかりつけ医と話すぐらいでしたし。

一般的な引きこもりの方々はここに出てくるアキラ君やカズヤ君と近いのかもしれません。私も近かったかもです。

そう思うと、随分間違った印象をもっていたと思ってます。

一歩も家から出ない人ってイメージを一方的に持っていました。

現状は違うんですね。

引きこもりの方の多様性に留まらず、紋切り型のイメージでは理解の覚束ないことが多く、必然的に多様性ということを考えざるを得なくなる・・・。

なるほどです。

多様性で引きこもりの問題を捉えて考えていく。

引きこもりと言っても、様々な方がいるから仕方ないのでしょうね。うーん、難しい話ですね。。

 

 

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