【引きこもり】「10年引きこもりでもうちの子は働ける…」1600人以上を支援したNPO関係者が語る”引きこもりのマッチング”

引く引きこもりには親にも一因がある
引きこもりには色々なケースがあります。
本人の性格や病気、家族関係、学校や会社の環境など、きっかけや要因は様々です。
また、その人にとって自分を守るために必要な行動の場合もあるので、引きこもり自体を完全に否定するつもりはありません。
問題は、その状況が長引き、固定化し、そこから動けなくなってしまうことです。
どのくらい長期化・固定化したら問題かには個人差がありますが、行政が示した引きこもりの定義は半年です。
私たちも、長くても1年たてば、問題としていいと思います。

引きこもりの人の大半は、親など家族と同居しています。一人暮らしの人でも、親から仕送りを受けている人が多くいます。
引きこもりのほとんどの人に、親との関係性があります。
逆に言うと、それは「親にできることがある」ということです。
ここで親が適切な支援をすれば、かなりの割合の方が次のステップに進めるはずです。

ところが実際はそうは行かず、引きこもりを長引かせている方が本当にたくさんいらっしゃいます。
そこでこの章では、我が子の引きこもりに対してうまく支援できず、長引かせてしまう親御さんの問題についてお伝えします。

 

親自身の素人判断は当てにならない
(事例1)
母「うちの子が引きこもっているんですが、どうしたらいいんでしょう?」
スタッフ「お子さんはおいくつですか? どのくらい引きこもっていますか?」
母「それはちょっと言えないんですが……」

(事例2)
父「うちの子はこんな状況なので、こういう支援をして欲しいんです」
スタッフ「多分それでは状況は改善しないと思いますが」
父「いえ、この支援がいいと思うので」

この会話のように、状況をあまり明かさずにアドバイスだけを欲しがる方や、自分で支援のストーリーを決めて、それだけをして欲しがる親御さんが少なからずいます。

ここまで本書をお読みになった方なら、マッチングの難しさがあり、「万人に合う支援なんてものはない」ことはお分かり頂けると思いますが、そのことをご存じない方が多くいます。「唯一の支援」「最高の支援」を探そうとする方もいます。

そもそも、引きこもり支援に関しては、親は素人です。
様々な引きこもりがいる中で我が子がどんなタイプに分類されるのか、支援にはどんな種類があってそのタイプにはどれが合うのか、ご存じないのです。

面談の際には必ず聞く項目があるのですが、それを自ら全て話してくれる親御さんは稀です。
こちらにとって大事な情報を、故意に隠したのではなく、大したことではないと思って話してくれなかった方もいます。
逆に昼夜逆転のように引きこもりではよくある傾向を、「うちの子は昼夜逆転で」と何度も話し、そこに固執する方もいます。
引きこもり支援に限らず、素人判断は時に間違いの元ですが、残念ながら親にはその自覚がありません。

 

「引きこもりは家族だけの問題」という思い込み
(事例3)
母「子どもが引きこもって10年になるんですが、こういう相談をするのは初めてです。恥ずかしいので、親戚にもご近所にも、誰にもこの話はしていません」

(事例4)
母「私たちだけではもう無理よ。支援を頼みましょうよ」
父「他人を入れるなんてとんでもない! 私たちで何とかしますから支援は結構です」

事例4のように、夫婦で相談に来て意見が割れることは珍しくありません。
父親が拒否する場合と、母親が拒否する場合の両方ともあります。

「引きこもりは家族の問題」「家族で解決すべきもの」と言われていた時代がありました。
「子どもが引きこもるのは親の育て方が悪いからだ。だから親が何とかすべきだ」という考え方です。
当時は社会の論調がそうでしたし、実際どこかに相談に行き、育て方を責められた方もいます。
結局どうにもできず、我が子の引きこもりをただ隠して、時間だけが過ぎているケースは相当な数にのぼるはずです。

私たちは1994年の活動開始当初から「引きこもりは社会の問題。家族をひらいて他者を入れて解決しましょう」と訴え、「家族をひらく」を活動理念に掲げ続けているのですが、なかなか受け入れてはもらえませんでした。ここ最近になってやっと「親だけで抱え込んではいけない」「他者を入れるべき」という意見を言う人が増え、流れが変わってきたと感じます。子どもが10代20代の若い親には、「引きこもりは外に相談していいもの」という考え方がだいぶ浸透し、かなり早い段階で相談にみえます。

ですが子どもが40代以上という親の多くは、昔ながらの考え方が染みついています。
我が子の状況を家族以外に話したことがない人などは、匿名の相談の電話をするだけでも、相当な決心が必要です。
「親の育て方のせいじゃない」「恥ずかしいことじゃない」「誰かに相談してもいい」「誰かの手を借りてもいい」と思ってもらうこと。
高年齢の親の多くにとっては、まずはこれが最初の大きな一歩になります。

 

「我が子のことは親の自分が一番分かっている」という幻想
(事例5)
母「うちの子は10年引きこもっていて働いたことはないんですが、働きたいと言っているので、就活のサポートをして欲しいんです」
スタッフ「就活ではなく、寮などでゆっくり体験を積むところから始める方がいいんじゃないですか?」
母「いえ、やる気はありますから、きっかけさえあればできるはずなんです」

特に母親に多いのですが、「我が子のことは自分が一番分かっているから、他人のアドバイスは参考程度にしか聞かない」という感じで相談に来られる方がいます。自分の予想と違うアドバイスが来ると反論するか、耳を閉ざしてしまいます。

どんな行動を取った、どんな言葉を言った、親にはこう考えているように見えるなど、親から聞く話はもちろん大切です。
ただし、そこからどう判断するかは、引きこもりに関する知識や支援経験の有無でかなり違ってきます。
ですが「ずっと見てきたのは自分」という気持ちを、親はなかなか捨てられません。
もちろんそこに強い愛情を感じるのですが、逆に愛情によって客観性が失われた話になることもよくあります。

更に親に社会経験がないと、子育ての経験だけから話をする傾向が強くなります。
例に挙げたようなケースでは、「じゃあご自分の会社に同じ経歴の方が来たら、採用しますか?」と聞くと、父親はほぼ全員が黙って「いきなり就活できるはずがない」と気付くのですが、ずっと専業主婦かパート勤務だった母親はピンと来ない顔をします。

また、本人が親にどこまで本当の姿を見せているか、という問題もあります。
いざ支援を始めて本人に会ってみると、「面談で親から聞いていたイメージとだいぶ違うな」と思うことがよくあります。

そもそも考えてみてください。20代30代になって親に全ての姿を見せ、気持ちを全て話している人が、どれだけいるでしょうか?
親子の間には、時に駆け引きが生まれます。
引きこもって長い時間が経ち、仕事を始めることに恐怖心が湧いていたりすると、何とか家の中に居場所を確保するために嘘をつく、なんてことは普通にあります。

例に挙げた「本人は働きたいと言っている」も、いざ仕事を紹介すると尻込みして逃げてしまう程度の気持ちかも知れませんし、こう答えればそれ以上は何も聞かれなくて済むから言っているだけ、という可能性もあります。

親が見ているのは我が子のほんの一面に過ぎません。だから外側からの客観的な意見が大切なのです。

 

支援は一定期間やってみて、ダメなら変えよ

(事例6)
父「子どもが引きこもってから5年、色んな所に相談に行きました」
スタッフ「具体的な支援を受けたことはありますか?」
父「どれがいいのか決められなくて、何もできていません」

(事例7)
母「私は10年間親の会に通っていて、指導されたことはちゃんと実践しています」
スタッフ「それで、お子さんに変化はありましたか?」
母「いえ、ずっと引きこもったままです」

例えばどこか体の調子が悪い時に、まず内科に行き、特に病気が見つからなければ外科など別の科や別の病院に行き……と行先を変えるのは、ごく当たり前のことです。病気が見つかって治療を始めても、ずっと体調が改善しなければ、別の病院へ行くことを考えると思います。

引きこもり支援も、同じです。
吟味した所にとりあえず行って、しばらく通ってみて、良くならなければ別の所へ、という発想で構いません。
逆に言えば、そういう心持ちでなければ合う支援に辿り着けないほど、引きこもりも支援も多様なのです。
合わない支援を続けると、改善が遅くなったり変わらなかったりするどころか、時には悪化もしてしまいます。

引きこもり状態が半年から1年続いたら何かしらの対応をするべきだと、この章の最初にお伝えしました。
遅くとも引きこもり1年の時点で何か本人への対応を始められるのがベストです。
ちなみに親が相談や親の会に行くことなどは、本人にアプローチしていないので、ここで言う「対応」には含まれません。
情報はそれ以前に収集しておき、目的や方針を決めて、実際に本人に働きかけを行うものが「対応」と呼べるものです。

そして、その対応には、ダメなら次に行く「期限」が必要です。
色々な考え方があるとは思いますが、私たちが提案する期限は2年です。
2年もあれば、引きこもりから一人暮らしや寮での暮らしに移る、バイトを始めて自立に至るなど、明らかな結果が出ると経験的に分かっているからです。
逆に2年やってみて状況に変化がなければ、残念ながら私たちの支援では無理だと判断するべきでしょう。

ただしあまり支援先をコロコロ変えることは、病院を転々とするのと同じで、避けるべきです。
きちんと吟味した上で選択し、一旦はその支援を信じ、きちんと任せなければ結果にはつながりません。
逆に、「やり直しがきかない」と思い込んで、一つの支援に固執し続けるのも避けるべきです。

https://bunshun.jp/articles/-/40206 文春オンラインより引用

 

エナベルで就労移行支援を受けています、ウサギのTです。

「引きこもりは家族だけの問題」という思い込みと、「我が子のことは親の自分が一番分かっている」という幻想…。

この二つだけで相当立ち直れる引きこもりの人が、だめになってる感じがします。

最初から専門家になる投げというのもダメですけど、かたくなに「自分たちの問題」と第三者の支援の手をこまねいてるのはもっとダメですね。

引きこもり支援も、ずっとまかせっきりではなく、良くなかった・効果が無かったら別のところへと。

人は十人十色。引きこもりの人たちも色々です。いくつかのパターンはあるでしょうが、すべてパターン通りにはいきません。

引用先の意見だと2年目安で考えるのがいいみたいですね。

2年目安でやってみて、ダメだったら次へ。きちんと変える時は吟味して変える。

それでいい方向にもっていければいいんじゃないかという話ですね。

とかく中年の引きこもりは問題山積ですから、一歩一歩が難しいですね。

 

 

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